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新生児・乳児とお別れし、こちらを訪問くださったあなたへ。
突然のお別れだったり、お別れの可能性がわかっていたり……お別れの状況は千差万別とはいえ、生まれてから年月が経っていない赤ちゃんを見送ることは、とても辛いことです。
インターネットやSNSでは、流産や死産のお別れについては見かけることも増えてきましたが、新生児死や乳児死のお別れについては、まだまだ情報が十分とは言えません。
この記事にたどり着いたママ・パパにとって、少しでも役立つ情報があれば幸いです。
※この先センシティブな内容が含まれます
出生後のお別れについて
お別れの種類と要因
出生後の赤ちゃんのお別れは、以下のように分けられます。
早期新生児死:生後1週(7日)未満のお別れ
新生児死:生後4週(28日)未満のお別れ
乳児死:生後1年未満のお別れ
お別れに至る要因は様々ありますが、大きくは以下の6つに分けられます。
- 胎児期から疾患があり、その疾患に伴うもの
- 出産時に何らかの問題が起こった
- 出生後に見つかった疾患によるもの
- 突然、容体が悪くなった/亡くなった
- 早産(小さく生まれたため「何かが足りない」あるいは「未熟である」ことに起因)
- 事件・事故
人口動態統計の結果を見てもお別れの要因はその他の場合も多く、様々な状況でお別れしていることがわかります。
また、乳幼児突然死症候群(SIDS:SuddenInfantDeathSyndrome)という、何の予兆や既往歴もないまま乳幼児が死に至る病気もあり、原因がわからないこともあります。
※人口動態統計:日本における出生・死亡・死産・婚姻・離婚について、厚生労働省が実施している全数調査のこと
亡くなった後の検査について
詳細な原因究明をしたい場合、以下のような検査を行うことができます。
①染色体検査
赤ちゃんの見た目や経過から染色体異常などを疑った場合、必要に応じて行うことができます。
②病理解剖
解剖することで死因を調べる検査です。
検査を行える病院が少ないことや、赤ちゃんのご遺体を傷つける必要があることから、行われないことも多いです。
③画像検査
赤ちゃんの全身(頭部、体幹、四肢)のCT、MRI、超音波などの画像を撮影する検査です。
ただし、画像のみで死因を診断できるわけではありません。
これらの検査は、医療機関によって行えない場合や、お別れのケースによって検査が適応しない場合がありますので事前にご確認ください。
費用がかかったり、原因が必ず特定できるわけではないため、医師の説明を聞いてご家族でよく相談をしましょう。
手続きについて
出生後まもないお別れの時に必要なこと
出生届について
まずは赤ちゃんの名前を決めて、出生届を提出しましょう(出生届の記載方法に不明な点がある場合、届出先の市区町村にお問い合わせください)。
出生届は、生まれてから14日以内に提出しなくてはいけません。
また、届出先の市区町村によっては、お祝いの言葉をかけられたり、その他手続きや医療費助成等の案内を受けたりする場合もあります。心身の負担になるようであれば、祖父母、その他親族等に届出をお願いしましょう。
出生届の届出人欄に赤ちゃんのママ・パパが署名をすれば、提出はママ・パパではなくても問題ありません。
届出に必要なもの
- 出生届(全国共通)
- 右側部分は医師・助産師が記入する出生証明書となっています。
- 届出人の身分証明書(不要の場合もあります)
- 印鑑(不要の場合もあります)
亡くなった後に必要なこと
死亡届について
新生児死・乳児死は、死亡届を提出する必要があります。死亡した日から7日以内に、役所へ提出しなければいけません。
死亡届の右側は「死亡診断書(死体検案書)」となっており、医師の記載が必須となります。赤ちゃんの死亡診断をした医療機関等で記載をしてもらいます。
「死亡診断書(死体検案書)」を記載する際に赤ちゃんの戸籍上の氏名が必要になるので、誤りがないように注意しましょう。また、生後1年未満の場合は出生時体重を記載する欄があるので、必要に応じて母子手帳を用意しておきましょう。
原則は親族、同居者が提出するように定められていますが、葬儀社が代行して手続きしている場合もあります。
※出生後まもないお別れの場合は、まず出生届を提出する必要があります。死亡届は出生届が受理された後、提出しましょう。
届出に必要なもの
- 死亡届(全国共通)
- 右側部分は医師が記入する死亡診断書(死体検案書)となっています。届出までに父母が左側部分を記入します
- 死亡診断書(死体検案書)
- 死亡届の右側部分に該当します
- 届出人の身分証明書(不要の場合もあります)
- 印鑑(不要の場合もあります)
火葬(埋葬)許可証の受け取り
死亡届を提出後、または同時に火葬許可申請書を提出し、火葬(埋葬)許可証を発行してもらう必要があります。これがないと火葬・埋葬が出来ません。火葬許可証の発行には、火葬場を決めておく必要がありますのでご注意ください。
※休日や時間外での火葬許可証の交付可否は各自治体によって異なるため、お住まいの自治体にご確認ください
注意事項
・死亡届が受理され、役所での手続きが完了すると、赤ちゃんは除籍として戸籍に記載されます。
・一度提出された死亡届は、再度届出人や家族が見ることは出来ません。各種手続きで必要な場合があるので、コピーをとっておきましょう。
※健康保険・年金等の資格喪失手続きなどに必要な場合があります。
火葬・供養について
火葬の手配
ご自身、または葬儀社経由で予約を入れます。死亡届を提出する前に予約を確定させましょう。また、赤ちゃんの骨は小さく細いため火葬後にお骨が残らない場合もあります。お骨を残したい場合は、葬儀社や火葬場に事前に確認・相談しましょう。
火葬に立ち会うのが辛い、お別れに向き合うのが辛いという方もいらっしゃいます。その場合は葬儀社や他のご家族にお任せすることもできます。無理をしてママやパパの心が壊れてしまわないように、本人も、周りの方も、しっかりとママとパパの心を気遣いながら手配を進めてください。
お棺・骨壷について
赤ちゃん用の小さなお棺・骨壷を用意します。
お棺は燃えやすい紙製や木製のものが一般的です。病院や葬儀社で手配できる場合もあるので確認しましょう。
副葬品(お棺の中にいれるもの)について
お花、お手紙、ママパパの写真や匂いのついた衣類・タオル、お菓子やおもちゃなどを添えられる方が多いです。
※燃えやすい素材のものに限られます。また副葬品を入れすぎてしまうとお骨が残りづらくなると言われています。
参列者の服装について
服装に関して特に決まりはありません。喪服、または準喪服、略喪服(平服)どのようなものでも構いません。火葬というTPOを意識した黒・グレーを基調とした地味で落ち着いた服装がよいとされます。
葬儀について
火葬だけで済ませる方も多いですが、ご葬儀を行う方もいます。葬儀社に依頼してもいいですし、ご家族で集まってお話をされる方もいらっしゃいます。赤ちゃんを想う気持ちを大切に、家族の時間をお過ごしください。
埋葬と供養について
お骨は必ずしも埋葬(納骨)をしなければならないというわけではありません。手元に残してママやパパの近くで過ごさせてあげるご家族も多いです。四十九日法要に関しても、絶対のものではありません。ママとパパがすんなりと受け入れやすいカタチを第一に、ご家族で話し合ってみてください。
日々の供養としてはお花やお菓子を飾ったり、月命日に家族で小さなイベントを、生後100日にお食い初めを、1歳の記念にお誕生日会をする形で弔いの気持ちを表現されるご家族もいらっしゃいます。
ママの過ごし方
ママの体と心のこと
新生児死、乳児死を経験したママは様々な状況に置かれていると思います。
産後間も無いお別れや、赤ちゃんの容体を見守る日々を過ごした後だったり、突然の事故によるお別れもあるでしょう。
とにかく疲れ切っているママの心と体。しっかりと心身を休めるようにしましょう。
産後まもない場合
身体は産褥期(さんじょくき)=妊娠で変化した身体が元の身体に戻っていく期間となります。下記のような症状に気をつけて、しっかりと心身を休めるようにしましょう。
悪露の状態
子宮内膜や胎盤組織などが排出されて出てくる分泌物のことを悪露と言います。血液混じりのものからはじまり、色や形状が徐々に変化し、量も減っていきます。また、帝王切開の場合は長引きやすいとも言われています。
悪露の量が明らかに増えている・鮮血が続く・貧血のような症状が出てくるなどの場合は、すぐに医療機関へ相談しましょう。
乳汁・乳房のケア
分娩後必要に応じて、乳汁を止めるための薬剤(カバサール®錠、カベルゴリン®錠等)が処方されることもあります。処方薬だけでは乳汁が止まらず、乳房に痛みや張りが続く場合は医療機関へ相談しましょう。
ホルモンや身体の変化
分娩後の女性は、ホルモンバランスが乱れ、体も心も調子を崩しやすいです。
週数や胎児の大きさ、分娩方法にもよりますが、骨盤の歪み、身体全体の痛み、貧血などママの体は疲労困憊。それに加え、赤ちゃんとのお別れという大きなショックから、眠れない、涙が止まらない、食欲がない、無気力……希死念慮を抱いてしまう方も少なくありません。
また個人差はありますが、一般的に1〜2ヶ月後には生理が再開すると言われています。あまりにも再開しない場合は、医療機関を受診しましょう。
“これだけは守ってほしいこと”
体や心がどんなに辛くても「退院後診察」は必ず受診しましょう。眠れない、気分の落ち込みが激しいなどの精神的な症状も、遠慮せず医師に相談しましょう。
大量の出血がある、我慢できない痛みや発熱が続く時は、すぐに医療機関に相談しましょう。
産褥期を経過している場合
乳汁・乳房のケア
タイミングやママの身体の状態に応じて、乳汁を止めるための薬剤が処方されることもあります。
処方薬だけでは乳汁が止まらず、乳房に痛みや張りが続く場合は医療機関へ相談しましょう。
ホルモンや身体の変化
産後や授乳期の女性は、ホルモンバランスが乱れ、体も心も調子を崩しやすいです。
授乳していた場合、母乳の分泌を促すホルモンである「プロラクチン」が排卵を抑えるため、月経の再開が遅れる傾向があります。個人差がありますが、授乳していないママは産後4ヶ月までに、授乳しているママは産後半年ほどで生理が再開することが多いと言われています。
また、赤ちゃんとのお別れという大きなショックから、眠れない、涙が止まらない、食欲がない、無気力……希死念慮を抱いてしまう方も少なくありません。
ママの心のケアをないがしろにしない
心の疲れに気づいたら、家族や友人など、誰でもいいので相談をしましょう。分娩した医療機関や赤ちゃんの入院していた医療機関、心療内科、自治体や外部の相談機関などを利用するのもひとつの方法です。当事者同士でお話をする場所や、ピアサポート、グリーフケアなどもあります。
自分にとって負担のないカタチをさぐってください。
仕事のこと
産後休業について
産後休業(産休)の取得が法律で定められており、分娩の翌日から8週間(当人の希望と医師の許可があれば6週間)が休業の期間となります。復職後も無理はせず、体と心の様子をみながら勤務をしましょう。
育児休業について
育児休業(育休)取得中の場合、基本的には育児休業が終了となり、育児休業を撤回するための手続きが必要となります。まずは職場に相談をしましょう。
復職後も不調を感じる場合は、早めに職場へ相談しましょう。場合によっては、休職や転職・退職を視野にいれる方もいます。
状況によりますが、傷病休暇や母性健康管理措置による休業を取得することもできます。
当事者の声 “私はこうだった”
<日常編>
- 夜になると記憶がフラッシュバックしてしまい、眠れない日々が続いた
- テレビのCMやネット広告にでてくる赤ちゃんを見るのが辛かった
- 外出時におなかの大きい妊婦さんや小さな子を連れた家族を見るのが辛く、外出を不安に感じた
- 親族や子連れの集まりに参加しなくてはならないことがあり、解散後に泣いてしまった
- 同じような境遇の人を探して、ずっとSNSやネットをみていた
- 何気ない言葉にも敏感に反応してしまい、うつ状態から抜け出せなくなってしまった
<仕事編>
- メンタルに不安を感じたまま復職し、バランスが取れずにオーバーワークとなり身体も壊してしまった
- 復職後、何気ない会話で同僚の子どもの話を聞くのが辛く、メンタル不調に陥ってしまい再度休職をした
- 不妊治療の再開も考え心療内科のフォローを受けつつ、パートタイム勤務へ切り替えた
- 我が子を亡くしたことを誰も知らない所で働きたく、転職をした
次の妊娠について
いつから、どのように次の妊娠を考えるかは、医療機関のアドバイスを参考にしましょう。次の妊娠をすぐに望まない場合は、予期せぬ妊娠を防ぐ意味でも、ピルや子宮内避妊用具(IUD)などの避妊法も選択のひとつです。
そのときに向けて、ゆっくりと心身の健康を取り戻していきましょう。
お別れ後に利用できる制度
ママ向けの制度
出産育児一時金
分娩や入院にかかる費用として支給される一時金で、健康保険の被保険者・被扶養者、または国民健康保険の被保険者のうち、妊娠4ヶ月以降に分娩をした方(死産、流産、人工妊娠中絶(経済的理由によるものも含む))が受け取ることができます。
子1人につき48.8万円が支給され、多胎児を出産したときは胎児数分だけ支給されます。
支給方法は3つ、9割の方が選択される<直接支払制度>、そのほかに<受取代理制度><産後申請方式>の方法がありますので、所属している保険組合や病院に確認してどの方法を選択するか検討しましょう。
育児休業給付金
育児休業給付金は、雇用保険の被保険者の方が、原則1歳未満の子を養育するために育児休業を取得した際に支給されます。
育児休業中に亡くなった場合、基本的には育児休業が終了となります。育児休業を撤回するための手続きが必要となり、育児休業給付金は受け取ることができなくなります。まずは職場に相談をしましょう。
傷病手当金
身体的、精神的に不調が続く場合には傷病手当金制度の対象となるケースもあります。医師に「傷病手当金支給申請書」を記入してもらい、勤務先の担当窓口に申請しましょう(勤務先の健康保険に加入している女性が対象。国民健康保険は対象外)。
医療保険
帝王切開術など健康保険の適用となる分娩方式となった場合、手術を保障する保険の支払対象となります。詳しくは、加入されている保険会社へご確認ください。
赤ちゃん向けの制度
NICUやGCUに赤ちゃんが入院していたり、治療のために高額な医療費がかかる場合もあります。
入院期間や赤ちゃんの状況、収入によって異なりますが、自治体や加入している健康保険によって医療費助成を受けることが可能です。ただし各種助成制度を利用するには、赤ちゃんの健康保険への加入が必須となります。加入している健康保険にて手続きを行いましょう。
また、赤ちゃんとのお別れ時期によっては、医療費の支払いまでに健康保険の加入が間に合わない場合もあるでしょう。治療を受けている期間に健康保険の加入資格があったことがわかれば、助成を受けることが可能な場合もあります。
お住まいの自治体や加入している健康保険によって手続きが異なりますので、詳しくは確認しましょう。
自治体の各種医療費助成制度について
各自治体、行政によって制度が異なります。こちらでは東京都の場合の助成について、一例を記載します。
乳幼児医療費助成制度(マル乳)
乳幼児を養育している方に向けて、国民健康保険や健康保険など各種医療保険の自己負担分を助成する制度です。
未熟児医療 (養育医療)
出生時体重が2,000グラム以下の乳児、もしくはそれ以外で生活力が特に弱い乳児のうち、入院して養育を受ける必要があると医師が認めた場合は自己負担額が助成されます。ただし、家族の収入に応じて費用の一部負担があります。
国民健康保険や健康保険など各種医療保険の助成制度について
高額療養費制度
同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が、あとで払い戻される制度です。
民間の医療保険
赤ちゃんが民間の医療保険に加入している場合、死亡保障がついているものもあります。
加入している保険によって保障が異なりますので、契約内容を保険会社にご確認ください。
<参考文献>
出生届|法務省|2024.8.23取得
死亡届|法務省|2024.8.23取得
乳幼児突然死症候群(SIDS)について|こども家庭庁|2024.8.23取得
令和3年(2021) 人口動態統計月報年計(概数)の概況|厚生労働省|2024.8.23取得
ご遺族への死後画像撮影前の説明ガイドライン|厚生労働省|2024.8.25取得
育児・介護休業法のあらまし|厚生労働省|2024.8.25取得
医療助成|東京都福祉局|2024.8.25取得
高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)|全国健康保険組合(協会けんぽ)|2024.8.25取得
資料協力
医療監修協力
冬木 真規子 先生(大阪公立大学大学院医学研究科発達小児医学講師/小児科専門医、周産期専門医(新生児))
この記事はSORATOMO編集部が独自に調査し編集したものです
記事の内容は2024年8月の情報で現在と異なる場合があります
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SORATOMO編集部
赤ちゃんとのお別れの「その時」から「これから、ずっと」共に生きるをテーマにしたWEBメディア「SORATOMO」を運営する編集部。流産・死産・新生児死・乳児死などで赤ちゃんとお別れをしたママと周囲の方へ向けた、生きていくヒントとなる情報をお届けします。