Top 記事一覧 体験談 お空の子が繋いだレインボーベビーとの出会い│妊娠37週死産を経験したママの現在―当事者の声 その後の物語#01

お空の子が繋いだレインボーベビーとの出会い│妊娠37週死産を経験したママの現在―当事者の声 その後の物語#01

赤ちゃんとのお別れを経験したあとも、ママの人生は続く。その人生をどのように生きるかは、まさに十人十色だ。

赤ちゃんとのお別れのあとに生まれる“レインボーベビー”を望む人もいる。

しかし、妊娠しても当たり前に赤ちゃんが生まれるわけではないことを、身をもって体験したママには大きな不安がのしかかる。

また、癒えることのないお別れによる悲しみとの向き合い方もママが抱える問題の一つだ。

今回は、お別れのあとにレインボーベビーを出産したママにインタビューを行った。

お別れの悲しみや妊娠中の不安、出産後の気持ちの変化など、どのように向き合ってきたのかお話を伺った。

池村七菜子さん(仮名)の現在

名前:池村七菜子さん(仮名)
地域:神奈川
職業:専業主婦
家族構成:ママ(35歳)、パパ(31歳)、お子さんがお空に1人、地上に1人(1歳)
31歳のときに自然妊娠、妊娠37週(妊娠10ヶ月)に発育不全により死産。その後、第二子を出産。

七菜子さんは、2022年8月に第一子の蓮ちゃんとお別れした経験をもつ。

そして2024年夏にレインボーベビーにあたる第二子を出産した。

※第一子とのお別れの体験談についてはこちら

お別れの記憶

妊娠37週で蓮ちゃんとお別れをして、ちょうど3年。

先天性疾患でおなかの外で蓮ちゃんが生きるのは難しいとわかった妊娠24週ごろから、産後1、2ヶ月くらいまでが精神的に一番辛い時期だったそうだ。

「SNSで繋がっていた予定日が近い妊婦さんは楽しそうにベビー用品を準備していました。
でも私は、妊娠中からお別れの準備をしなければいけなくて……。
それがとにかく悲しくて辛かった。
周りと比べてしまって、羨ましい気持ちがどんどん膨らんでいってとても苦しかったです」

どん底の気持ちは蓮ちゃんが生まれて火葬したあとも続いていく。

「出産したら子育てをする。
そんな当たり前と思っていたことができない状況が辛くて、蓮ちゃんのいない現実を直視できなくて寝てばかりいました。
起きてもずっと泣いてばかりだったから……」

七菜子さんは、色褪せないあの時をそう静かに振り返る。

グリーフとの向き合い方

転機となったのは産後3ヶ月頃のこと。自助グループの集まりに参加して小さなお洋服を作ったり、新しく仕事を始めたりしたそうだ。

「ずっと蓮ちゃんのことを考えて泣いてばかりいるのが精神的にキツくて、『このままじゃ私ダメになってしまうんじゃないか』と思ったことがきっかけでした。
少し蓮ちゃんのことから離れる時間を作ってみたんです。
そのおかげか、気持ちのピークが少しだけ過ぎたように思います」

同じ頃、知人から心に深く残る大切な言葉をもらったという。

七菜子さんは、声を詰まらせながら言葉を紡ぐ。

「蓮ちゃんはすごく頑張ってくれたんです。でも、私は自分の頑張りを認めることができなくて……。
そんな時、知人が『2人ともよく頑張ったんだね』と声をかけてくれて、ハッとしたんです。
『そっか、私も頑張ったんだよね』って救われたような気持ちになりました」

だから、七菜子さんは当時の自分に「よく頑張ったね。辛くてもゆっくり生きていこうね」と声をかけてあげたいと話す。

あたたかいメッセージが、時を超えてあの日の心を包んでいくようだ。

未来を望む

こうして、ほんの少しずつでも気持ちを整理していくなかで、心の奥底に押しこんでいた1つの気持ちが湧き上がってきたのだと言う。

——子どもが欲しい。育児がしたい。

それは、まさしく蓮ちゃんが教えてくれた気持ちそのものだった。

「蓮ちゃんは、それはもうとにかく可愛かったんです。我が子はこんなに可愛いんだ!と彼から教えてもらいました。
次の子もきっと可愛いんだろうな。出会いたいな。こんなに可愛い我が子の育児をしてみたいなって」

——それはお別れの翌年の春。桜の季節とともに静かに芽生えた、次の命への想いだった。

不安に差し伸べられた手

第二子を妊娠してからは、生まれるまで常に不安が付きまとった。

「前回のように病気が見つかったら……」

「途中で心拍が止まってしまったら……」

そんな思いがいつも心の片隅にあった。

病院は蓮ちゃんの時と同じところだ。

トラウマだった妊娠中期のスクリーニング検査。

そこで、また問題が見つかってしまった。

幸い重大な病気ではなかったが、聞いた時は足がすくみ目の前が真っ暗になった。

前回の経緯を知っている医師やスタッフは、七菜子さんの不安を和らげるよう最大限の配慮をしてくれたそうだ。

「健診のたびに、先生は『不安になるよね、しっかり診るからね』と対応してくださって本当にありがたかったです。相談にもたくさんのっていただきました」

病院の対応は、不安で埋め尽くされた七菜子さんの心に一滴の安心を与えてくれた。

SNSでの居場所

七菜子さんにとって、SNSは今回の体験と切っても切り離せない存在だ。

蓮ちゃんを妊娠した時のアカウントは順調な妊婦さんの投稿であふれていて、心が追い詰められ見ることができなくなった。

そこで、居場所を求めて「赤ちゃんとお別れした人」と繋がるためのアカウントを作った。

第二子妊娠中も、気持ちを共有できそうな似た境遇の人と繋がった。

辛い気持ちや不安な気持ちを吐露すれば、誰かが共感してくれる。

逆に、誰かの想いを読んで「あぁ、すごくわかる」と頷くこともある。

そんな画面越しの交流はリアルな友人関係へと発展し、七菜子さんを支える大きな力になった。

孤独の中でも、心を寄せ合える人がいる。

SNSは、安心を与えてくれる場でもあったのだ。

出産がもたらした変化

無事に出産した七菜子さんには、2つの気持ちの変化があったそうだ。

「蓮ちゃんを産んだ時は、『生きている子と亡くなった子、何が違うんだろう。産んだことに変わりはないのに』と思っていました。
でも第二子を産んで育児をして、成長していく様子を見ていると『やっぱり生きている子と亡くなった子は違うな』と感じてしまいました。
それが私には寂しくて……」

七菜子さんにとっても思いがけないものだった。

第二子の小さな命の息づかいを感じるたび、蓮ちゃんではそれが叶わなかったことを思い知る。

同じと思っていた2人の子の間には“生”というどうしても埋められない差があることに気づいてしまい、胸が締め付けられた。

一方でポジティブな変化もあった。

「お別れ当時は蓮ちゃんの話はごく限られた人にしかできなかったんです。蓮ちゃんの出産を可哀想なことだと思われるのが嫌で……。
でも第二子を出産してからは、蓮ちゃんなしに第二子のことは語れないなぁって思ったんです。
だから、第二子のためのSNSのアカウントでは、蓮ちゃんの話も一緒にするようになりました」

当事者以外とも繋がるアカウントで蓮ちゃんの話をオープンにできるようになった。

これまでのように共感を得たいわけではない。

“赤ちゃんとのお別れ”という現実があるのだと多くの人に知ってもらえたら、と七菜子さんは語る。

これからできること

七菜子さんは、今後やりたいことがあるそうだ。

「当事者に向けて、ハンドメイド作品を作って販売できないかと考えています。
まずは、お空の赤ちゃん用とレインボーベビー用のキーホルダーを作ってみました。
これからもっと商品を増やして、当事者の支えになれたらと思います」

お空の赤ちゃんをモチーフにしたキーホルダー

当事者との繋がりは蓮ちゃんが与えてくれたものだ。

その縁に感謝して、何かできることをしたいと話す七菜子さんは、どこか柔らかく温かい表情を携えていた。

レインボーベビーを望む人へ

七菜子さんから、レインボーベビーを望む人へメッセージをいただいた。

「妊娠出産に対して不安や葛藤があるのは当然のこと。
でも、不安をゼロにはできなくても、私には寄り添ってくれるSNSの仲間や病院のスタッフがいて、無事に第二子を迎えることができました。
レインボーベビーを望む人たちにそんな心の拠り所が見つかるといいなと思います」

「妊娠中は、不安のせいで喜んだり浮かれたりしちゃいけないって感情にストップをかけがちです。私もそうだったし、フォロワーさんもそうでした。
——でも、ふと思ったんです。
確かにお別れを経験する前のように、100%の気持ちで喜ぶことはできないかもしれない。
でも、妊娠がわかった時や胎動を感じた時、ほんの少しでも普通の人のようにワクワクしたり喜んだりしてもいいのかもって思うようになりました。その幸せな気持ちを否定しないでいいんじゃないかなって」

決して忘れることのできない痛みを心に抱えている。

それでも、こう語る七菜子さんの目は穏やかでやさしさに満ちていた。

第二子、レインボーベビーのキーホルダー、蓮ちゃんの産着とお揃いのキーホルダーの写真
蓮ちゃんはきっとレインボーベビーのそばで、いつも見守ってくれているだろう

未来への歩み方

赤ちゃんとのお別れの後も人生は続いていく。

しかし、身を裂かれるような喪失感との付き合い方は、誰も教えてくれない。

もしレインボーベビーを望んでも、その時に対峙する不安の対処法もわからない。

先を見据えることに恐怖を感じる方も多いだろう。

そんな中で、お別れの先にある未来の自分を想像するのはとても難しいことだ。

七菜子さんのような未来もあれば、また違う未来もあるだろう。

しかし、どんな生き方も間違いじゃない。

未来への歩み方は1つじゃないから——。

これから歩む未来への道中に、あなたにとって拠り所となるあたたかい居場所が見つかることを願い、このコラムの結びとする。

著者(写真=七菜子さん提供/取材・文=SORATOMOライター 村木まゆ)


この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
記事の内容は2025年9月の情報で、現在と異なる場合があります。
当事者の経験談を基に構成しており、同じお別れを経験した方にあてはまるものではありません。
不安な症状がある場合は、医療機関の受診をおすすめします。
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